革 装丁 作り方
- Rolf Reeves
- Sep 22, 2023
- 7 min read
革装本のレッドロット対策
1.レッドロットとは 革は植物繊維を原料とする紙や亜麻布、綿布等と比較すると劣化しやすい物質です。時代を経た革装本の多くは植物タンニンで鞣された革で装丁され、劣化による損傷を受けています。特に19世紀後半の革装本に使用された表装革には、レッドロット(Red Rot)と呼ばれる劣化状態を示すものが多数存在します。レッドロットとは、革が長い時間にわたり光や酸素、大気汚染物質(硫黄酸化物や窒素酸化物等)に曝されることで、革の表面が赤茶けた粉状に劣化する現象です。これによって、軽い摩擦で革が剥離したり、手や周囲の他の書籍を汚すことがあります。現在行われているレッドロットに対する処置としては、粉状に劣化した革を接着剤様の物質を含浸させて固着し、革が容易に崩れることを防ぐという方法が最も有効であり一般的に使用されています。この処置は本や革の構造的あるいは物性強度を向上させるものではありませんが、革の摩擦による損傷や粉状化した革による汚損の予防には大きな効果が期待できます。

2.HPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)とは HPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)とはレッドロット対策に使用される固着剤として一般的なもので、HPCをエタノールに溶かすことで得られます。最初にHPCのエタノール溶液のレッドロットへの有効性を確認し、利用したのはトリニティ・カレッジ図書館のアンソニー・ケインズで、この方法は1979年から現在に至るまで広く採用されています。革の表面に塗布されたHPCエタノール溶液は、革の表面から中層内部まで浸透し粉状の劣化した革の組織を固着します。表面にフィルム状の皮膜を形成するわけではないので、後から表層が剥離することはありません。
3.HPC溶液の作り方 ・HPC…20g ・無水エタノール…1L エタノールを容器に入れ攪拌しながら、粉末のHPCを少しずつ投入します。多少のダマができますが、一昼夜放っておくと自然に溶けてトロッとした溶液になります。溶液の濃度はそれほど厳密でなくても構いません。作った溶液はガラス瓶やアルミ缶、ペットボトル等で保管することができます。その際にはしっかりと栓ができる(瓶の内圧が上昇したときに抜けにくいスクリューキャップ等)防湿性のある容器を使用します。作り置きしても腐敗することはなく、室温で保管できます。
4.処置方法 使用前には溶液を入れた容器を振る等して攪拌し、柔らかい刷毛等に溶液をつけて、レッドロットが生じている革の上に塗布します。できれば本の表紙を若干開いた状態で立てて乾燥させるか、キッチンペーパーのような凹凸のある紙を挟みながら重ねて乾燥させます。処置した本を未乾燥の状態で重ねると、表紙同士が接着する危険性があります。エタノールが揮発して革が乾燥し、手に付かなければ処置は完了です。
5.処置上の注意 ・エタノールは揮発性物質で引火性があるので、処置の最中は火気厳禁です。また、エタノールの毒性は比較的低いですが、処置は換気のよいところで行い、エタノールの蒸気が充満しないように注意します。不安がある場合には有機溶剤吸収機能のあるマスクを使用します。 ・資料に対しては比較的安全な処置ではありますが、中には多少の黒ずみが残るなどの問題が発生する革もあります。そのため、必ず事前に革の折り返し等の目立たない部分でテストを行います。 ・革の銀面がひび割れ、剥離状態になっているものはHPC溶液を塗布すると剥離が進む場合があるので避けたほうが無難です。 ・塗布量は必要最小限にすることが望ましく、濃度の高いHPC溶液の使用や多量に塗布を行うとべたつきやその他トラブルの発生が増長されます。一回の塗布で十分固着ができない場合には、乾燥後に再度塗布します。 ・消毒用の局方エタノールはかなりの水分を含んでおり、それが劣化した革に影響を与える場合があるので必ず無水エタノールを使用します。
6.参考文献 ・海野雅央他・訳編『治すから防ぐへ—西洋古刊本への保存手当』(日本図書館協会シリーズ本を残す№5 1993) ・『防ぐ技術・治す技術 – 紙資料保存マニュアル‐』(日本図書館協会 2005) ・日本曹達株式会社『NISSO HPCカタログ』
自分だけの本の装丁を作る!「ブックバインディング」に挑戦してみた
お彼岸を過ぎ、秋の気配が深まる今日この頃。みなさん、秋の夜長の一冊はもう決まりましたか?
近代まで、ヨーロッパでは「本」と「装丁」は別々に行うものでした。愛読家たちは、書店で手に入れたお気に入りの1冊を装丁屋に持ち込み、思い思いの素材やデザインを選び自分だけのコレクションを増やしていったのです。
電子書籍が増え、出版不況が叫ばれる昨今ですが、今でも職人たちの丁寧な手仕事はヨーロッパの人々に愛され続けています。
そんな本の装丁技術の1つ「ブックバインディング」を、ロンドンの歴史あるカンパニーで体験することができます。
本好き、手仕事好きが集まる小さなワークショップは、ガイドブックでは見つけることのできない貴重なロンドン体験になるはずです。
※制作過程について、ネタバレとなってしまうため細部の技術は省略して掲載しています。ぜひ現地で体験してみてください!
ブックバインディングのマテリアルショップ 'SHEPHERDS'
Bookbinding Taster Course
本文作り
表紙作り
表紙のベースが完成! この背表紙の布は、店内にある素材の中から自由に選ぶことができます。私は、ちょっと厚めで手触りの良いエンジ色をチョイス。 ここで渋めの色を選ぶと、アンティークな雰囲気に仕上がります。ネイビーやモスグリーン、深めのマスタードなどを選んでも素敵ですよ。
完成
脇によけておいた本文部分を挟み込み糊付けしたら、世界に1冊だけの本が完成です! 糊が完全に乾くまで時間がかかるので、持ち帰り後は重石をして置いておくのがベターです。実は今回、最後の糊付けに失敗して、私が作った本は通常よりもページ数が少なかったりします。 そんなハプニング(……というよりもミスですが)があっても先生がちゃんとフォローしてくれるので大丈夫! 納得のいく出来栄えのものをお持ち帰りできますよ。
ワークショップ受講特典
自分でもっと作ってみたい方は、10%オフで素材を購入することができます。 ブックバインディングの素材は、アルバム作りやグリーティングカードなどにも応用できるものがたくさんあるので、手作り好きには嬉しい! お土産用のラッピング素材として購入しても良いですね。
先生からメッセージ
今回のワークショップを担当してくれたのは、笑顔がとってもキュートなFreyaさん。ポーツマス大学を卒業後、このカンパニーで技術を習得し、講師としてブックバインディングを教えています。 そんなFreyaさんから、日本の読者の方々へメッセージが。「ブックバインディングを楽しんでね! これはとっても素敵な手仕事であると同時に、リラックス効果もあるのよ。」
まとめ
少人数で和やかな雰囲気の中、初心者でもとても楽しく体験を終えることができました。英語に自信のない方でも、丁寧にゆっくり進めてくれるので大丈夫ですよ! 体験中は、紅茶やコーヒーをサーブしてくれるので、疲れたときはホッと一息休憩を。紙に触れ、無心に手を動かしていると、あれも作りたいこれも作りたいと想像力が掻き立てられます。 アイディアが枯渇してしまったとき、行き詰ってしまったとき、ひらめきやインスピレーションを与えてくれる場所です。ぜひ、ロンドンの手仕事に触れてみてください。
SHEPHERDS 30 Gillingham St, Pimlico, London SW1V 1HU イギリス 《SHEPHERDSオフィシャルサイト》はこちら ワークショップの申し込みはネットから簡単にできます。今回ご紹介した初心者向けコースの他にも、日本の和綴じやペーパーカッティングなど多彩なコースが揃います。季節に合わせた特別コースが開催される月もあるので、ロンドンへ行く方はぜひチェックしてみてくださいね。



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