薬 歴 速く 書く
- Rolf Reeves
- Oct 30, 2023
- 5 min read
薬歴をうまく書くコツはありますか?
このような薬歴、ときどきお目にかかることがありますね。薬歴を見ても、なにがあったのか、患者さんがなんと言ったのか、ほとんどわからない薬歴です。それでは、服薬指導がおざなりなのかなと思うと、必ずしもそういうわけではないようなのです。実際に患者さんと話しているところを拝見すると、結構しっかりと話をしているのに、薬歴にきちんと書かれていない状況なのです。 そんな薬剤師さんにお話を伺うと、「話している最中はいろいろ思い浮かんで、患者さんに対する指導はそれなりにできているのだが、薬歴を書くときになると、なにを書けば良いのか、まったく思い浮かばない」ということが多いように感じます。そんな方に私が必ず申し上げるのは、まず、 患者さんをよく見てください ということです。 患者さんをよく見るとは、患者さんに関心を寄せるということです。 ただ、ボーッと眺めていればよいわけではありません。 単に「薬歴にうまく書けない」のではなく、そもそも、患者さんの様子、患者さんの気持ちの変化、患者さんの薬識などに意識が行っていないのだと思います。 患者さんに関心を寄せて、まず自分自身が患者さんのことをしっかりと理解しましょう。「今この方は、こんなことで悩んでいる」ということがしっかり理解できれば、それを薬歴に書けばよいだけです。

もう一つ気になるのは、どんなメモを取っているのかということです。メモの取り方にも工夫が必要です。 うまく薬歴が書けないとおっしゃる薬剤師さんは、例えば、副作用の有無とか、他剤服用の有無といった患者さんの情報しかメモしていないことが多いようです。 それも大事なのですが、 自分自身が目の前の患者さんのどこに着目して、どんな指導をしたのか、なぜその指導をした方が良いと思ったのか、それを簡潔にメモする習慣をつけましょう。 そうすればきっと、薬歴を書くときに「書くことが思い浮かばない」ということはなくなると思います。
「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い?
まず、 POSの基本として、「プロブレムごとに考える」ことが大事です。 したがって、 プロブレム1つにSOAP1つが大原則 となります。もし 扱ったプロブレムが3つあるならば、SOAPも3つ必要 となります。この大原則が、薬剤師の現場では守られていないことが多いようにお見受けします。 じつは、よく聞く悩みである「Aがうまく書けない」理由の多くは、複数のプロブレムの情報がひとつのSOAPに混ぜ込んで書いてあることが多いからなのです。 「プロブレムごと」の原則を守ると、Aは意外に簡単に書けるようになるはずです。
さて、私は外来患者さんの服薬指導において、「プロブレムはできるだけ1つに絞ろう」と申し上げてきました。この相談者さんも、その話を聞いたことがあるのではないかと想像します。ただ、薬歴を拝見する限り、複数のプロブレムが混在した記述になっています。 誤解のないように申し上げておきますが、 実際には指導をしたのに、薬歴に書くときに1つに絞るのではありません。薬歴は薬剤師の医療記録ですから、やったことはもれなく記録されなければなりません。 指導したことはすべてもれなく薬歴に記載してください。そうではなくて、 「服薬指導そのものを一番大切な話題1つに絞った方が、確実に患者さんに伝わる」ということなのです。
プロブレムを1つに絞ることができれば、薬歴にたくさんのSOAPを書かなくても済むはずです。 あれこれたくさんのことをお話するより、患者さんの理解は進むことが期待できます。ただ、それには条件があります。それは、また次の回も自分の薬局に来てくださるということです。そして、できれば自分自身が次も応対できるとなお良いと思います。つまり、 「かかりつけ薬剤師」であることが、的を絞った服薬指導をしやすくなる条件になるのです。
さて、じつは前回、夕食後の薬が結構余っているという話があって、ドクターより「調整するから持っておいで」と言われたとのことでした。また、食欲がなく食が細くなったという話もありました。以上より、3つのプロブレムを取り上げているようですので、3つのプロブレムを立てて薬歴を書いてみましょう。テーマを絞るつもりでも、どうしてもほかの話題に触れることはあります。そういう時は、 面倒がらずに指導した数だけのプロブレムを立てましょう。 とくに、 患者さんの方から話題が出た場合は、しっかり取り上げないと、患者さんの満足度が下がってしまいますので、患者さんの気持ちに沿ったプロブレムの取り上げ方も意識してください。
(S) PT-INR 2.6、BP 133/62 脈拍 73 ワーファリン数値高めとのこと。ご飯を摂る量も前よりは少し減っている。 だるさがあるというか、今は無理しないようにしている。検診は10月位にあると思う。余った薬は忘れてしまった。
(O) ワーファリン1.5mg→1.25mgそれ以外はDo。
(A) このところ食欲不振気味とのこと。今回は新たな飲み忘れはない。
(P) ワーファリン減量後も怪我など気をつけておきましょう。食欲不振が悪化するようなら教えてください。検診の結果見せてください。
(プロブレム) PT-INR値が上がってきたことによるワーファリン投与量の調整
(S) ワーファリン数値高めなので、少しだけ減らすと医師に言われた。それ以外にとくに話はなかった。
(O) PT-INR2.6(先月は2.2)、BP 133/62 脈拍 73。ワーファリン1.5mg→1.25mg
(A) PT-INR値が上がってきたことによる、ワーファリン投与量の調整。原因は不明。
(P) 少し血が止まりにくくなっていますので、怪我などこれまで以上に気をつけてくださいね。
Pnext: 次回も検査値確認してください。
(プロブレム) 飲み忘れた残薬の調整
(S) 前回「薬が余っている」と医師に話したら「持っておいで」と言われたのだが、今日は忘れてしまった。医師からは「それなら次に持ってきて」と言われた。
(O) 今回は新たな飲み忘れはないとのこと。
(A) 医師が処方量の調整をしてくれるようだ。
(P) 今度は忘れずに持ってきてくださいね。処方…
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