グリフィス クズ
- Rolf Reeves
- Oct 30, 2023
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【ベルセルク考察】一見完璧人間のグリフィスはガッツに対し、憧れや恐れがあるのでは?(9000字)
オレの采配で命を落とした仲間達に…何ら責任を感じてはいないよ… なぜなら…それはあいつらが自分自身で選んだ戦いなのだろうから このオレがそうである様にね …でももし あいつらのために……死者達のために……オレに何かしてやれることがあるとしたら それは 勝つこと あいつらが…命を懸けてまでしがみついた オレの夢を成し遂げるために 勝ち続けることだ オレの夢は仲間の屍の上に立つことでしか実現はできない しょせん血塗られた夢だ そのことで後悔や後ろめたさはない だが… だが……何百何千の命を懸けながら自分だけは汚れずにいられるほど……それほど……オレの欲しいものはたやすく手に入るものではないんだ

グリフィスの夢とは?
グリフィスの人生観と友人観
誰のためでもない 自分が……自分自身のために成す夢です 世界の覇権を夢見る者 ただ一本の剣を鍛え上げることに一生を捧げる者 一人で一生をかけて探求していく夢もあれば 嵐の様に他の何千何万の夢を喰らい潰す夢もあります 身分や階級…生い立ちに係わりなく それが叶おうと叶うまいと人は夢に恋い焦がれます 夢に支えられれ 夢に苦しみ 夢に生かされ 夢に殺される そして夢に見捨てられたあとでも それは心の底でくすぶり続ける…… たぶん死の間際まで…… そんな一生を男なら一度は思い描くはずです '夢'という名の神の……殉教者としての一生を……
彼らは…優秀な部下です 何度も一緒に死線を越えて来た……私の思い描く夢のためにその身をゆだねてくれる大切な仲間… …でも 私にとって友とは…… 違います 決して人の夢にすがったりはしない……誰にも強いられることなく 自分の生きる理由は自らが定め進んでいく者…… そして その夢を踏みにじるものがあれば 全身全霊をかけて立ちむかう… たとえそれがこの私自身であったとしても… 私にとって友とは そんな… '対等の者'だと思っています
ガッツへの思いは友情か?
その後、グリフィス自身もガッツへの思いが特別なものであることを自覚していくようだ。 ゾッド初登場の際、グリフィスはまた部下を率いてガッツを助けにいく。その際は自分の身の危険を押してまで、ガッツを助けている。 その後、ガッツにまたなぜ自分を助けるのかと問われ、三年も前の話をこだわるね、と揶揄しながらも以下のように答えている。
この場面ではグリフィスは階段の柵の縁に頬杖をつき、ガッツを見るわけでなく、空を仰ぎながら言っているため自問しているかのようにも見える。 しかし6巻冒頭ではその場面が繰り返された後、じっと問うようにガッツを見つめるのだ。 このとき、グリフィスはガッツの問いかけによって、自分が彼に抱いている特別な何かに自身で気付いたのではないだろうか。
前述したとおり、グリフィスは自身の友人観についてはっきりと詳細にシャルロットに対して語っているが、もし、グリフィスにとってガッツが友であるという認識がはっきりあったとすれば、これはガッツのことを形容している言葉とも言えるはず。 しかし、この時点ではガッツには自分の夢があるわけでもない。それどころか、自分の生きる理由も分からず、それに苦しんでいる節さえある。 グリフィスの友人像にこのときのガッツは全くと言ってよいほど当てはまっていないのだ。
……いつもの様なムキ出しの闘志が感じられない 静かな目をしている ……だがそれでいて隙が無い 迷いの無い目だ それだけ決意が固いということか…… 行きたいのか!? そんなに…… オレの手の中から出て行きたいのか!? ……だめだ だめだ!! 許さない!! 行かせない!!! (中略) 本当に殺してしまうことも……!! ……それでも 手に入らないのなら それでも…!! かまわない!!
友情でないのなら、グリフィスがガッツに対して持っていた思いの正体は何か?
あいつだけが まるで闇夜の雷のように鮮烈にオレの中に浮かび上がる そして繰り返し 繰り返し 津波にように押し寄せる 無数の感情 憎悪 友愛 嫉妬 空しさ 悔しさ いとおしさ 悲しみ 切なさ 飢餓感 渇望し去来するいくつもの感情 そのどれでもない そしてすべてを内含した巨大な激情の渦 それだけが無感の中 消え入りそうになる意識を くさびとなって繋ぎ止める (中略) オレはあいつのこととなると いつも冷静ではいられなくなる オレをこの闇の中に閉じ込める原因となったあいつが 今は唯一オレの生命を繋ぐ糧となっている 数千の仲間 数万の敵の中でただ一人あいつだけが なぜ……? いつからだろう 手に入れたはずのあいつが 逆にこんなにも強くオレを掌握してしまったのは
遠い日 あの路地裏の石畳から始まった 終わらない遊び オレにとって 唯一神聖な がらくたを手にするための巡礼の旅 だが あいつは今 オレの中で そのがらくたが色あせるほど ギラギラと目に痛い
グリフィス(ベルセルク)
「自分の国を持つ」という夢のためには文字通り手段を選ばず、軍資金を賄うために美少年好きな貴族に我が身を売っていたこともあるほど。 冷徹さを持ち、鋭い洞察力と人心を掌握、操作する才能に長ける。権謀術数にも才を示し、自分に反感を持ち、暗殺を企てた王族や貴族をガッツと共に陥れ、ひとまとめに殺害する手腕も見せている。その他戦場での戦略、指揮、人望、統率力等のあらゆる面においても秀で、まさに天才と呼ぶに相応しく、数々の武功を挙げ、ミッドランド国における騎士位、貴族位、そして名声を勝ち取っていく。 一方で子供のように無邪気な表情を見せることもあり、仲間とふざけ合ったりもする。また自分の「夢」の犠牲になった幼い子どもの死を悼み、夢のために犠牲になった人々のためにも前に進まなければならない、という責任感も負っている。なぜグリフィスが「夢」を持ったのか、と問われるシーンがあるが、「そんなのわからないよ」と答えており、計算高さとは裏腹に欲求、感情はひたすら純粋なのだといえる。しかしその二面性が部下たちを惹きつけているのもまた事実である。
ミッドランド国の王女であるシャルロットに、自分の「夢」と「友」の価値観を語ったのを偶然、耳にしたことでガッツは自身のあり方に対し疑問を抱くようになる(この時のガッツはグリフィスに命じられグリフィスの政敵を暗殺した直後だったが、その任務の際に心ならずも子供を斬ってしまった事もあって己の生き方を問う事になった)。迷いと思索を重ねた結果、それからほどなくガッツは「グリフィスにとって、対等な存在=真の友になる」ため、鷹の団を離れることを決意する。 しかし、グリフィスにとってガッツはもはや部下ではなく唯一の友と言えるほどの存在になっており(それを自覚していたのかは不明)、彼なしで夢の成就はありえないと思うほどであった。そして、「失うぐらいなら殺してでも退団を止める」という決意の下、再び一騎打ちを挑む。だが戦場の最前線で鍛え抜かれたガッツはグリフィスを遂に破り、鷹の団を去る。 この認識と感情のすれ違いが、後に大きな悲劇を生む。
「闇の翼」フェムト
グリフィスは剣すらまともに握れず、「自分の国を持つ」という夢も潰えてたが、それでもキャスカとどこかの街で静かに暮らすという淡い夢を抱いて生きようとする。しかし、ガッツとキャスカが相思相愛であると知ると自身の夢は全て叶わぬものとなったと悟り、馬車を無理やり動かすことで鷹の団から立ち去ろうとする。 思うように動かせない身体で馬車を操り切れるはずもなく、馬車から小さな湖に投げ出され、もはや自分は何も追うことができないことに絶望し自殺を試みるも、それすらできず失意の底に沈む。しかし、グリフィスは水底で拷問の際に失った(下水道に落ちて行った)ベヘリットを見つけ再び手にする。 その時、日蝕が起きはじめ、それとともに奇形の人間達あるいは異形の者達ともいうべきものの群れがグリフィスの周辺に突如現れる。グリフィスを追ってきたガッツは「わからねえが あれはやばいもんだ…!」と直感し、グリフィスを庇おうと彼のもとに近寄る。
「来るな…来るな」「今お前に触れられたら 今お前に肩を掴まれたら オレは二度と オレは二度と…! 二度とお前を…! ・・・」
ガッツがグリフィスに触れた瞬間、ベヘリットがグリフィスの絶望に反応して発動し、鷹の団は異空間に引き込まれる。四人のゴッド・ハンドが顕現し、彼等からの宣言にグリフィスは夢を叶えるため最も大切なもの=鷹の団を生贄に捧げる事を決意。 異形の者達の群れが変貌した「使徒」達による殺戮の宴『蝕』を通じ、鷹の団の面々の血肉と断末魔を糧に、グリフィスは人間の心と身体を捨て、ゴッド・ハンドの最後の一人フェムトへと転生する。 髑髏の騎士に救われたガッツとキャスカ、同じく髑髏の騎士のおかげで別働隊で唯一生き残ったリッケルトを残し、団は壊滅した。 スランによれば仮に団を生け贄にしなかった場合は「団員達が再起不能になったグリフィスを恨む事なく介護して共に生涯を過ごす選択もあった(意訳)」との事。
一方でこの未収録話がなくても前者の主張でも説明することは可能である。例えば上記のグリフィスがガッツに触れられる直前の台詞の最後の「・・・」は、雑誌掲載時は「許せなくなる」であったが、誇り高いグリフィスが「対等の友」であり、そして自分が夢を奪われる切っ掛けを作ったガッツに救われるだけの惨め極まる存在になった上、その心情を理解せず尚一方的に関わろうとしてくるガッツに愛を超えて憎しみを抱いたことは想像に難くない。 また「(仲間を捧)…げる」と宣言する直前に『何千人の仲間、何万人の敵の中で、ただ一人、お前だけが俺に夢を忘れさせた』と、決意の瞬間に独白しており、グリフィスの中のガッツという存在が、どれだけ大切なものだったか窺い知ることができる。
「光の鷹」グリフィス
聖地アルビオンで起こった『模擬蝕』。1000年に1度のゴッド・ハンドの現世への顕現。 ガッツとキャスカ、二人の烙印の者に引き寄せられた悪霊の集合体は、巨大な血肉のアメーバのように人々を飲み込んでいった。 母親のキャスカを守り、死に掛けた幼魔はベヘリット型使徒『完璧な世界の卵』の体内で姿を変えていく。 その姿は人間であった頃のグリフィスそのもの。彼が「絶対者」として現世(うつよ)に受肉した瞬間だった。 復活したグリフィスはゾッドを筆頭に、使徒たちを率いて、「新生・鷹の団」を結成。 クシャーン帝国の侵攻によって、崩壊寸前であったミッドランド王国の領土奪還を開始する。 圧倒的なカリスマによって、使徒たちだけではなく、解放した地区の人々や、軍、貴族、法王、クシャ―ンからの転向者など人種や国境を越え、様々な人間を同胞とし、ついにミッドランドの首都ウィンダムで、クシャーン帝国の王、ガニシュカとの決戦に入る。 グリフィスに挑むため、通常の使徒を超えた存在である、『終わりの魔獣』となったガニシュカを、髑髏の騎士を利用して消滅させることによって、「世界の理」を破壊する・・・。
名台詞
「私にとって友とはそんな・・・'対等な者'だと思っています」 ──6巻「貴きもの」 鷹の団時代、シャルロットに語った言葉。あまりに傑出した存在故、対等の者がいない孤独感を漂わせる。
「唯一人お前だけがオレに夢を忘れさせた」 ──12巻「決別」 グリフィスをして一度は夢を忘れさせるほど、ガッツの存在は大きなものに。
声
アニメ「剣風伝奇ベルセルク」およびゲーム版での声優は、森川智之(幼少期は高山みなみ) 2012年2月公開の劇場版では櫻井孝宏(幼少期は竹内絢子)が声優を務める。 2016年新アニメ「ベルセルク」でも引き続き櫻井孝宏が担当。
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