Swot 分析 製造 業
- Rolf Reeves
- Oct 30, 2023
- 12 min read
1.中小企業の課題解決に役立つ枠組み思考とは
ここ数年、政府の景気刺激策が大胆に打たれていますが、景気が好転している実感を持つことができない状況が続いています。 政府は2%のインフレターゲットを定めているものの、新聞、雑誌から見られる傾向としても、消費マインドはなかなか向上しないのが実態です。 外食産業における低価格メニューの価格競争、通信業界においても格安スマホの大競争が見られるなど、市場の低価格志向、デフレ傾向に歯止めが効かない状況です。 中小企業においても、大手企業との取引では受注単価の引き下げ要請が強まっていたり、顧客との契約金額、販売価格の低下傾向が続いています。

中小企業が抱えている人材・組織に関する課題
人材・組織に関する悩みも根深いものがあります。 バブル崩壊、リーマンショック後の採用抑制の反動で、ここ数年採用競争が激しくなっており、人材の確保が難しくなっています。 また、人口減少という経営環境下で、過去の成功体験の延長線上で事業を拡大してくことが難しいという状況もあります。 このような経営環境下では、経営者一人の知恵だけで縮小してく既存事業の反転攻勢をかけるには限界があり、幹部や現場社員が一体となった事業創出が必要です。 しかしながら、そのような人材育成が進んでおらず、企業家精神やイノベーション意欲を持った社員が少ないという悩みが多く聞かれます。
これらの問題を解決するために有効なものとして、枠組み思考を活用するという方法があります。 ビジネスで枠組み思考を活用すると、事業開発や組織開発を合理的に行うことが可能になります。 中小企業が抱えている課題は多岐に渡りますが、本レポートでは、より活用する場面の多い、稼ぐ仕組みづくり(戦略立案)、および組織力強化の2つのテーマに絞って、それぞれの場面で活用できる枠組み思考を紹介します。
枠組み思考とは
枠組み思考とは、ものごとを考える基礎理論のことです。 例えると、スポーツの「フォーム」、囲碁や将棋の「定石」のようなものです。 枠組み思考は、経営学者やコンサルタントなどが思考ツールとして開発してきたもので、古典的なものから近年に開発されたものまで数多く存在します。 枠組み思考ごとに手法やフォーマットが異なるため、解決したい課題に応じて、どの枠組み思考を使用するのかが重要となります。 今回紹介する2つのテーマ別の枠組み思考において整理すると、下表の通りとなります。 それぞれの枠組み思考の作成ポイントや活用法については、次章以降で解説します。
稼ぐ仕組み作りに役立つ枠組み思考
中小企業が抱える事業面の経営課題を克服していくためには、既存事業の強みを活かして、市場を開拓したり、商品開発をしたりという工夫が必要になってきます。 「どうせウチは中小企業で取り柄がないから。」という声も多く聞きますが、意外と自社の取り柄を理解していない中小企業があります。 下記の事例は典型的な中小企業の成功事例です。
このように、中小企業であっても自社の強みを活かして事業開発を行っていくことが可能です。 稼ぐ仕組み(経営戦略)を立案する場面では、まずは、自社が置かれている状況を的確に把握し、経営課題を整理することが必要となります。 経営課題を把握すると、自社が取るべき戦略を立案することが可能となります。 その際に役立つ枠組み思考として、代表的な3つの枠組み思考を紹介します。
3C分析
3Cとは、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)のことで、ビジネスの利害関係者をこの3つに分けて分析し、戦略を立案します。 市場・顧客分析では、自社のサービスや商品を提供する市場・顧客を把握します。 競合分析では、競合企業を調査し、市場や顧客を競合企業からどのように奪い、守るのかを検討します。 自社分析では、自社の経営資源や企業活動について把握します。
SWOT分析
SWOT分析は、外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)を組み合わせて限られた経営資源を最適活用するための戦略を策定する枠組み思考です。 SWOTとは、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つの頭文字のことです。 外部環境は、マクロ環境とミクロ環境に分けられ、マクロ環境は間接的に、ミクロ環境は直接自社に影響を及ぼす要因で、自社の状況をもとに機会と脅威に分けて分析します。 内部環境は、社内の経営資源ごとに強みと弱みに分けて分析します。
次に、4つのカテゴリーで上げられた内容を掛け合わせて自社が取るべき方策を検討します。 この手法は、外部環境(機会・脅威)と内部環境(機会・脅威)を掛け合わせて行うことからクロスSWOTと呼ばれています。 機会・脅威・機会・脅威の掛け合わせによって、次の4つの方策が導かれます。
VRIO分析
VRIO分析の目的は、経営資源を分析して自社の競争優位性を把握するために実施します。 VRIOとは、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の4つの頭文字のことです。 この4つを区分ごとに分析することで、自社の経営資源が持っている競争優位性が明確になります。
組織(Organization)については、自社の経営資源を有効に活用できる組織体制になっているのかを分析します。 経営資源に価値があり、希少性があり、模倣困難であっても、それを上手く活用できる組織になっていなければ、永続的な競争優位性を発揮することが出来ないということです。 実際にVRIO分析を行う場合は、競争優位性を把握したい経営資源を上げて、4つの区分でチェックして評価します。
組織力強化を促進させる枠組み思考
中小企業のもう一つの課題として、人材育成、組織活性化、すなわち組織力の強化が挙げられます。 「社員が成長しない。組織が沈滞ムードである。改善提案がない。」というのは、多くの中小企業で見られる傾向です。 しかし、嘆いていても状況は変わりません。 下記の企業は典型的な中小企業ですが、いくつもの取り組みを通して人材育成、組織活性化に成功した事例です。
SL理論
SL理論は、部下の成熟度に応じた適切なリーダーシップを発揮するために用いられる理論です。 SLというのは、Situational Leadership(リーダーシップ条件適応)の略です。 部下の成熟度を把握してSL理論を活用することで、効果的な人材育成を実践することができます。 SL理論では、部下の成熟度を指示的行動(仕事志向)と共働的行動(人間志向)の2つの軸で、4象限(教示型・説得型・参加型・委任型)に分類します。 部下の成熟度の判定は、指示的行動を「ティーチングの必要度」、共働的行動を「コーチングの必要度」に置き換えると分かりやすくなります。 部下ひとり一人の成熟度を右記の表を活用して判定し、部下それぞれに対するリーダーシップのスタイルを決めることができます。
ジョハリの窓
ジョハリの窓は、相互理解を深める場面で役立ちます。 自分が理解している自分と他人 が理解している自分を4つの窓に分類し、互いに開放された領域が明らかになります。 こ れをうまく活用すると、相互理解が深まりコミュニケーションが改善されます。 また、未 知の自分を発見することもできるため、自分自身の成長にもつながります。
GROWモデル
GROWモデルは、対話を通じて部下の目標達成や自己実現を図る場面で活用できます。 GROWとは、目標の設定(Goal)、現状の把握(Reality)、資源の発見(Resource)、選択肢の創出(Options)、目標達成の意思確認(Will)の頭文字のことです。 GROWモデルは、以下の5つのステップが踏みますが、それぞれの段階で、質問を投げかけることによって自身自身で考えさせることが重要です。
GROWモデルで目標や計画を立てた後も、定期的に部下の進捗状況を確認して、必要に応じてフォローしていくことも、部下を育成するためには必要となります。 以上、9つの枠組み思考を紹介しましたが、いずれも自社が抱えているさまざまな課題を解決するためには有効なツールといえます。 それぞれの場面に応じた枠組み思考を活用すれば、その効果を実感できるはずです。
■参考文献 「ビジネス・フレームワーク」堀公俊 著(日本経済新聞出版社) 「戦略フレームワーク25」ボーガン・エバンス著(ダイヤモンド社) 「事業戦略策定ガイドブック」坂本雅明 著(同文舘出版) 「戦略フレームワークの思考法」手塚貞治 著(日本実業出版) 「成功確率を高める意思決定」安藤浩之 著(産業能率大学出版部)
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SWOT分析とは|分析事例、やり方を分かりやすく
SWOT分析は、自社独自にフォーカスすることができる経営分析の手法です。たとえ業界や業種が同じでも、独自の戦略をなしうることが可能である、というのがSWOT分析の基本的な理論です。 自社のいる業界の常識や価値、自社の規模やレベルの課題点を一番よく知っている経営者が、SWOT分析を通じて「脅威」と「機会」を念入りに分析し、「マーケットに沿った強み」を整理することで、自社独自の経営戦略を立案することが可能となります。 その意味で SWOT分析は、中小企業だからこそ行うべき経営分析の手法 であるということができます。
(4)SWOT分析を活用した経営計画書の作成ステップ
(5)SWOT分析のやり方・ポイント
SWOT分析は、「SWOT」だからといってこの順番で行う必要はありません。 とくに中小企業の場合では、まず「O(機会)」から始めるのがおすすめです。そして、「O(機会)」が使える「S(強み)」について議論します。 次に「「脅威 (Threats)分析」」「W(弱み)」の順番で行う「OSTW」の順で進めるケースもありますし、強み弱みに時間がかかることが予想される場合には、「TOWS」の順で進めるケースもあります。
SWOT分析①「強み (Strengths)分析」 SWOT分析における強みは、いわゆる「自社の良い点」という意味ではありません。良い点が戦略に活かせないなら、それは強みということはできません。つまり強みのポイントは、「戦略的に、それを活かすことができるか」つまり「生産性向上に使える具体的な経営資源といえるか」という意味です。 強みは、「強みにつながるサービス体制とは何か」「強みにつながる専門性、知識、熟練度は何か」強みにつながる対応力は何か」「強みにつながる意思決定のスピードはどうか」といったチェック項目に沿って検討します。 SWOT分析②「弱み (Weaknesses)分析」 SWOT分析における弱みは「事業の欠点」「改善点」ではなく、今後事業を成長させるうえでネックとなる事項、つまり「機会、可能性に使えない経営資源は何か」です。 「競合と比較して、自社が明らかに劣っているものは何か」「顧客開拓、企画力で弱みは何か」「顧客からのクレームで多い項目は何か」といったチェック項目に沿って検討します。 ただし、この「弱み」にはあまり時間をかけないことが大切です。時間をかけて追求し過ぎると、「できない理由」が正当化されてしまうリスクがあるからです。 SWOT分析③「機会 (Opportunities)分析」 機会とは、顧客ニーズやニッチな商品・サービスを見つけ、顧客が増えて儲かることです。 しかし中小企業の場合には、この「機会」がなかなか出てことがあります。
(6)SWOT分析の事例
ここでは、分かりやすくホテル業を例にとります。 観光地としてあまり知名度が高くないエリアのホテルです。 ワークショップのような形で、従業員から強み・弱み・機会・脅威に関する意見を聞きます。
S(強み) W(弱み) ・首都圏から2時間弱という立地 ・新しい施設 ・サービス力の高さ ・美味しい食事 ・レジャー施設が近い ・知名度が低い ・集客力がない ・広告予算がとれない ・高速のインターチェンジから遠い ・温泉施設などがない O(機会) T(脅威) ・カヌーの川下りのイベント ・ウォーキング客の増加 ・秋祭りの集客力 ・登山コースの整備 ・首都圏の日帰り客の増加 ・近隣の観光地の知名度の高さ ・新型コロナによる景気悪化 ・外国人観光客の減少 ・近隣の新規ホテル ・コロナ後の海外旅行のニーズ
ここまで意見が出たら、次はホテルが提供する価値を考えてみます。 顧客は、なぜホテルにお金を払って泊まろうとするのでしょうか。「泊りがけでも見たいもの、体験したいものがあるから」でしょうか。それとも「ホテルに泊まること自体に価値があるから」でしょうか。 仮に「体験したいものがあるから」であれば、イベントが開催される時にはホテルをフル稼働させてその価値を提供します。また「ホテルに宿泊すること自体に価値があるから」であれば、「宿泊する」という最小限の価値のみを提供するという考え方ができます。また、日帰り客からのニーズに応えるための方法を検討することもできます。 このように、集めた情報から対策を検討していきます。
秋祭りのイベント開催時のホテルの「売り」を考える ・食事だけの提供はできないか ・弁当を売れないか ・イベントにちなんだ名産品を販売できないか 首都圏の日帰り客へホテルの「売り」を考える ・登山客の荷物を預かるサービスを提供できないか ・駐車場の提供、簡易休憩所の提供をできないか イベントがない時の宿泊客を増やす方法を考える ・Webで集客する方法はないか ・旅行代理店に営業できないか
まとめ
以上、SWOT分析についてご紹介しました。 SWOT分析は、中小企業において活用される手法であり、厳密なルールなど知らなくても、おおよその意味さえ把握していれば、ある程度の対策を導き出せるというメリットがあります。 ①強み(Strengths)・②弱み(Weaknesses)・③機会(Opportunities)・④脅威 (Threats)を書き出したら、それぞれをクロス分析して、 「強みを活かして、機会を利用できる施策はないか」 「強みを活かして、脅威に対抗できる施策はないか」 「弱みを理解して、機会に活かすことはできないか」 「弱みを理解して、脅威を避ける施策はないか」 を検討していきます。事業に関するアイディアはすぐには浮かばないものですが、SWOT分析を行うと、行動のアイディアが出やすくなります。
SWOT分析について相談できる税理士をさがす
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」 で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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